「お肉のよもやま話」料理で再発見!お肉の魅力、おいしい秘密 2025年5月号
週刊いな「お肉のよもやま話」2025.5月掲載。
今回は山の肉屋のスタミナ煮込み新発売

遠山郷では、荷を運ぶ職業が成り立っていた時期があった。
昔の衆は「歩荷(ぼっか)さ」とか、「剛力(ごうりき)さ」とか呼んだ。
ちょっとずつ意味は違えど、今で言う「シェルパ」や「ポーター」って感じかな。
秋葉街道は諏訪から高遠、大鹿、遠山を経て秋葉神社を結ぶ古い街道で、
中央構造線に沿うように南北を結んどって、信州街道とか塩の道とも言います。
この街道では物流を担うために、馬による運搬ももちろん盛んで、
馬による運搬の場合は「馬力(ばりき)さ」って呼んだんだって。
海から山間部へ当然塩も運ばれとって、終点の塩尻という地名も、
静岡の海から運ばれてきた、塩の終着点を意味するって説もあるに。
遠山郷じゃ、奥山で獲った熊や猪、鹿を麓まで背負って下ろすのも
「歩荷さ」の仕事だった。
「究極の重労働」なわけだけど、歩荷の衆は力があって、足も強かった。
まあ、山仕事の衆は基本的には、チカラがあって、豪傑、迫力があったみたいだ。
オラのオトウチャは、そういう衆とウマが合うみたいだったから、
若い時分から酒飲んじゃあ、ワルサもしとったみたいだが、そんな時に
聞いた話を生活に活かしとった節がある。
「足腰の養生に筋を食え」「膝の弱い衆には筋の肉」なんつって、
なんだかスジをよく煮とったが、後で調べると、中国の薬膳にある教え
「同物同治」っていう考え方で、身体の不調を治すには、調子の悪い
部位と同じものを食べると良いっちゅーのがあるとか、
栄養学的にも、筋骨を強くし、「気」と「血」を補う食材、とある。
スジ肉には潤いを与えてくれるコラーゲンもたっぷりだし、
枯れない身体づくりに役立つって。

オラは、まあ、そういうオトウチャに若い時分は反発心も激しくあったが、
今じゃその言動を懐かしく思い出すことも多々ある。
けっこうな労働の後にゃ、味噌を舐めたり、醤油を薄めて少し飲んどったな、
とか、薄く切ったニンニクを味噌汁に入れとったなとか、
生卵ぶっかけメシは毎日食べとったな、とか。
そういう言動が、大なり小なり、オラの商品開発に活かされとるのを自覚しとる。
そういう意味じゃ、今回開発した「山の肉屋のスタミナ煮込み」は、
オトウチャとオラとのコラボレーションかもしれん。

主原料はマトンのすじ。そして、うずらの卵。ニンニクの効いたパンチがある味。
今も歩荷さは、山小屋へ必要物資を運んだりしとるみたいだで、
歩荷さたちにも食べてもらいたいし、
山登りする衆の山ごはんにしてもらったり、なんしろ、足腰使う衆の
スタミナ食になればうれしい。
歩荷さは、重い荷を背負って山を越えた。
あらゆるものをその背に背負い、自分の足で一歩一歩、前へ前へ進んだ。
その山越えする姿をイラスト化してもらって、この新商品のパッケージにした。

三遠南信自動車道青崩峠トンネルが貫通して注目を集めたが、かつて峠を越えて、
往来の文化を作って来た歩荷さたちへの敬意と、新しい峠越えの文化を
作ろうっちゅーオラの決意の表れ。
もはや遠山郷におったって、時代の変化は感じるし、今はその境目だって思う。
新時代を生き抜きぬくにゃあ、組織とか、肩書とか、その場所場所、その時間を越えて、
これまでの自分を越えて行かにゃあだ。
地域と地域、人と人の境を越えて、変化を起こしてみたい。
その変化をいくつもいくつもつないで、未来に繋がる明日をつくってみたい。
重い荷を背負った歩荷さも、まずは、よっこらしょと立ち上がりその一歩を踏み出した。
さあ、オラも、スタミナ煮込みを食べて行くぞぉ。
(※現在、山の肉屋のスタミナ煮込みは遠山郷本店のみで販売をしています。
ご了承くださいませ。遠山郷へ行った際にはぜひお試しください!)


















