「お肉のよもやま話」料理で再発見!お肉の魅力、おいしい秘密 2025年12月号
週刊いな「お肉のよもやま話」2025.12月掲載。
今回は、山肉の王様 熊肉

数年前まで、なんだかわりあい有名なクマは、
熊本のご当地キャラ「くまもん」や、信州の「あるクマ」だった気がする…ところが、だ。
日本各地で連日熊の出没の報道が相次ぎ、今は「ほんとうのクマ」がすごく
有名になっちゃった。
今になって、あちこちで、いろんな情報や、いろんな考えが交錯している。
クマは恐ろしい敵でやっつけんといかん…云々
クマはかわいそうな存在だ‥云々。
今になって、突然現れた存在であるかのようなことを見聞きするので、
オラは不思議な気がしている。
なんだかみんなで忘れちゃったかのように暮らしてきたかもしれんのだけど、
もうずっとずっと前からクマはおった。明らかに、おったんだに。
オラの地域は大物猟の本場とか聖地と呼ばれる遠山郷。
山とともに暮らす地域だから、熊や山は身近で恵みをもたらしてくれる
存在だと思っている。
もちろん、熊を恐れつつも、熊を狩って、生活の糧にしてきた。
おそらく、熊の方も、人間を恐れていると思う。
お互いにおっかねえなと思いながら、そういった緊張感や適度な距離を
保ちながら生きる。
オラは世の中の状況が変化しても、これまでと同じように、
猟師さんが命がけで獲って来てくれたものをきちんと仕入れてきちんとお肉にしますに。
いまは、だから、大切なことは「熊のことを知ること」だと思う。
伊那市出身の映画監督・後藤俊夫さんの作った、
映画「マタギ」(熊撃ちの老猟師を西村晃さんが演じた)を見るとか
(女房殿は伊那小学校時代に学校で見たって。大迫力だったもんで覚えとるって)、
喬木村出身の児童文学作家・椋鳩十さんの「月の輪ぐま」を読むとか。
月の輪ぐまの舞台は遠山郷だでね。こういうことからでいいと思う。
そして、食べてみることも大切かも知れん。
信州味噌のタレで、ゴボウや大根などの根菜とコトコト煮込む「猟師鍋」。
山の王者らしい野性味にあふれた味だ。
家畜の鶏・豚・牛とは明らかに違う事を誰もが感じると思う。

オラのオトウチャの野生のお肉の下拵えはちょっと独特で「醤油洗い」をする。
和食の下拵えで使われることが多い方法で、醤油の塩分で身が引き締まりにおいが取れる、
下味がつく、などの効果があるとのこと。
オトウチャは味噌や醤油を自分で作っとった猟師たちからこの方法を教えてもらって、
特に熊はハチミツが好きだで、基本的にその動物が好むものとの相性はいいはずだと、
醬油にハチミツを加えて下拵えしたら、熊肉の良さが際立ったそうだ。
おいしく食べるのには下拵えや組み合わせはとても大切だし、
良い関係には適度な距離や緊張感は必要かもしれん。
クマと人間も、だが、
オラと女房殿の間に漂う適度な緊張感も、夫婦円満の秘訣かも、だに。



















